相続放棄と遺品整理.docx

文責:弁護士 石井浩一

最終更新日:2025年08月05日

1 遺品整理をする際には注意が必要です

 結論から申し上げますと、被相続人の遺品を売却したり、廃棄をしたりすると、基本的には相続放棄が認められなくなってしまう可能性があります。

 被相続人の預貯金を口座から引き出すことも同様です。

 遺品を調査して何がどれだけ存在するかを確認することや、汚損を防ぐために清掃をするという限度であれば、保存行為であるため、相続放棄の可否への影響はありません。

 以下、遺品の処分をすると相続放棄ができなくなる理由と、例外的な事案について説明します。

2 遺品の処分をすると相続放棄ができなくなる理由

 民法第921条柱書と同条第1号には、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」には、「相続人は、単純承認をしたものとみなす」と定められています。

 参考リンク:e-Gov法令検索(民法)

 単純承認とは、相続人として被相続人の権利義務を承継することです。

 一般的に相続といえば、単純承認のことをいいます。

 「処分」とは、具体的には遺品を売却してお金に換えることや、廃棄することをいいます。

 例えば、遺品の中に高級な腕時計があった場合に、売却をすると相続放棄ができなくなってしまいます。

 そのため、相続放棄をする場合には、遺品の処分をしてはいけないということになります。

3 例外的な事案について

 いわゆる形見分けとして、遺品の一部を取得するという行為については、処分行為に該当しないとされることもあります。

 昭和40年5月13日山口地方裁判所徳山支部判決においては、形見として背広上下、冬オーバー、スプリングコートと位牌を持ち帰り、時計、椅子二脚の送付を受けたケースについて、処分行為に該当しないと判断されています。

 もっとも、東京地裁平成12年3月21日判決においては、被相続人のスーツ、毛皮、コート、靴、絨毯など財産的価値を有する遺品のほとんど全てを自宅に持ち帰った行為について、処分行為に該当すると判断されています。

 したがって、形見分けとして遺品を取得する場合には、その遺品の財産的価値や量について十分に注意を払う必要があります。

受付時間

平日 9時~21時、土日祝 9時~18時
夜間・土日祝の相談も対応します
(要予約)

所在地

〒250-0011
神奈川県小田原市
栄町1‐8-1
Y&Yビルディング3F

0120-41-2403

お問合せ・アクセス・地図

PageTop